■最近の悩み→ウケない。
■最近の悩み→ウケない。
僕は、思春期のある時点から「お前面白いな」と言われることを心の支えにして生きてきました。
10代や20代前半の頃は、自分で言うのもなんですが、そこそこウケていたと思います。
例えば古くからの友人と飲んで、昔話で盛り上がった時、「あれ面白かったな」と話題に登るのは僕の話です。
打率が高い方ではありませんでしたが、出塁率の高さと時折見せる特大のホームランには定評があります。
意外性の男です。
当時は必勝法がありました。
「相手のハードルを、ほんの少しだけ大げさに超えてみせる」ということです。
「全裸になる流れになったとき、率先して脱ぐのは二流。一流は、先っちょの皮をちょっと剥く」という意識です。
それだけで、拍子抜けするぐらい簡単にウケていました。
イージーな仕事でした。
20代半ばを過ぎたころからか、気がつけばいつの間にか流れが大きく変わっていました。
「これはバカウケ間違いない」と思って行動すると、「ややウケ」に終わります。
「最低、クスクス笑いぐらいは起きるだろう」と少し置きに行くと、耳鳴りがするぐらい静かになります。
僕はスベりました。
スベりつづけました。
そうしていつの間にか「面白かった」と言われる代わりに、「まあがんばってたよ」と言われるようになりました。
ウケないんです。
友達と話していても、キャバクラに行っても、誰も僕の話を聞いて爆笑してくれないんです。
助けてください。
誰か、助けてください。
大事なことなので2回言いました。
すいません。
でも切実なんです。
本当に。
20代前半がすると面白いことを、おじさんが同じようにすると痛々しくなる。
それはわかっているんです。
じゃあ、おじさんはどうすれば面白いって言われるんですか?
面白いってなんですか?
集団の中で誰か弱い人間を見つけて、悪口を言うことですか?
誰かの失敗談を面白おかしく話すことですか?
「こいつはいじられキャラだから」と言いながら立場の弱い人間に無茶な注文をして、少しでも笑いが起きれば「どう?おもしろかっただろ?」いう顔をすることですか?
バラエティ番組の司会者気どりで?
糞くらえ!!
糞くらえ!!
糞くらえ!!
それでも、徐々にそうなりつつある自分に吐き気がする。
例えるなら、おれは名もなき花になりたい。ふとした瞬間、誰かの心を慰めるような。誰も傷つけることなく。そんなおじさんに。
忘れな草の花を御存じ? あれは心を持たない。しかし或日、恋になやむ一人の麗人を慰めたことを御存じ? 蛙飛び込む水の音を御存じ?
坂口安吾『ピエロ伝道者』
いまのところ、理想はくまだまさし。
では、まず小道具を作りましょう。